第25課 睡眠
本文
ひっそり静まり返る夜のオフィス街で、24時間明かりの消えない店がある。サラリーマン向けのコンビニエンスストア、「ビジネスコンビニ」だ。
ここではコピー、ファックスはもちろん、製本、印刷、翻訳などのサービスが受けられる。その上、海外とのテレビ会議も可能で、コンピューターオペレーターまで控えているのだそうだ。仕上げたばかりの会議資料を手に、夜中に飛び込んでくるサラリーマンも多いという。それも、最近の「24時間社会」に応対したサービスの一つだろう。
このようなコンビニエンスストアやファミリーレストラン、ゴルフ練習場などの24時間営業といった、「24時間社会」に応対したサービス競争によって、夜眠らない職業の人たちが増えている。
コンビニエンスストアなどが24時間営業するということは、そこで働く人だけでなく、コンビニの弁当などを作る工場で働く人や、それを運ぶ人など、さまざまな人たちが深夜労働を行っているということだ。
コンビニの弁当を作る工場で午前3時から7時までパートで働くある主婦は、「夜眠るのは長くて4時間。日中、車を運転している時、眠くて意識が遠くなることがある」と話す。
コンビニの増加によるばかりではなく。宅配サービスの拡充や
リストラによる人員削減などによっても、深夜労働は過酷にならざるをえない。トラック運転手300人を対象に行ったアンケート調査では、4人に3人が「走っている最中に居眠りしたことがある」と答えたそうだ。
人間の生体リズムは、午前0時から4時にかけて最も睡眠を必要とするのだそうだ。居眠りによる死亡事故の約2割はこの時間帯に起きているという。トラックの運転手たちは眠くなると、窓から顔を出して風に当たったリ、大声で歌を歌ったりと、眠気を解消するために努力し、昼間の仮眠で寝不足を補っている。
「24時間社会」は、危険と隣り合わせの「寝不足社会」によって支えられているともいえる。
先日、大学生になって以来、午前4時ごろ寝て正午ごろ起きる生活が5年も続いているという人の話をテレビで見た。夜眠れず朝起きられない「睡眠覚醒リズム障害」という現代病の一種なのだそうだ。朝起きられないことによって仕事を失うなど、深刻な問題を引き起こす場合もあるらしい。
「睡眠覚醒リズム障害」に陥ると、体温、血圧、ホルモンなどのリズムも夜型に固定されてしまうので、睡眠時間帯を変えようと思っても変えられないという。
ある医者の実験によると、人間の体は24時間ではなく25時間周期でリズムを刻んでいることが報告されている。放っておけば1時間ずつずれていくのを、朝の明るい光が補正してくれているの
だそうだ。だから、夜更かしをすると、リズムがどんどん後ろにずれていって、起きている時間帯には太陽の照っている時間が4.5時間しかないということになりかねない。心身に不都合な影響が出てくるのは当然である。
「睡眠」をめぐって現代人が抱える問題は、ますます深刻になりつつある。
第25課 睡眠
本文
ひっそり静まり返る夜のオフィス街で、24時間明かりの消えない店がある。サラリーマン向けのコンビニエンスストア、「ビジネスコンビニ」だ。
ここではコピー、ファックスはもちろん、製本、印刷、翻訳などのサービスが受けられる。その上、海外とのテレビ会議も可能で、コンピューターオペレーターまで控えているのだそうだ。仕上げたばかりの会議資料を手に、夜中に飛び込んでくるサラリーマンも多いという。それも、最近の「24時間社会」に応対したサービスの一つだろう。
このようなコンビニエンスストアやファミリーレストラン、ゴルフ練習場などの24時間営業といった、「24時間社会」に応対したサービス競争によって、夜眠らない職業の人たちが増えている。
コンビニエンスストアなどが24時間営業するということは、そこで働く人だけでなく、コンビニの弁当などを作る工場で働く人や、それを運ぶ人など、さまざまな人たちが深夜労働を行っているということだ。
コンビニの弁当を作る工場で午前3時から7時までパートで働くある主婦は、「夜眠るのは長くて4時間。日中、車を運転している時、眠くて意識が遠くなることがある」と話す。
コンビニの増加によるばかりではなく。宅配サービスの拡充や
リストラによる人員削減などによっても、深夜労働は過酷にならざるをえない。トラック運転手300人を対象に行ったアンケート調査では、4人に3人が「走っている最中に居眠りしたことがある」と答えたそうだ。
人間の生体リズムは、午前0時から4時にかけて最も睡眠を必要とするのだそうだ。居眠りによる死亡事故の約2割はこの時間帯に起きているという。トラックの運転手たちは眠くなると、窓から顔を出して風に当たったリ、大声で歌を歌ったりと、眠気を解消するために努力し、昼間の仮眠で寝不足を補っている。
「24時間社会」は、危険と隣り合わせの「寝不足社会」によって支えられているともいえる。
先日、大学生になって以来、午前4時ごろ寝て正午ごろ起きる生活が5年も続いているという人の話をテレビで見た。夜眠れず朝起きられない「睡眠覚醒リズム障害」という現代病の一種なのだそうだ。朝起きられないことによって仕事を失うなど、深刻な問題を引き起こす場合もあるらしい。
「睡眠覚醒リズム障害」に陥ると、体温、血圧、ホルモンなどのリズムも夜型に固定されてしまうので、睡眠時間帯を変えようと思っても変えられないという。
ある医者の実験によると、人間の体は24時間ではなく25時間周期でリズムを刻んでいることが報告されている。放っておけば1時間ずつずれていくのを、朝の明るい光が補正してくれているの
だそうだ。だから、夜更かしをすると、リズムがどんどん後ろにずれていって、起きている時間帯には太陽の照っている時間が4.5時間しかないということになりかねない。心身に不都合な影響が出てくるのは当然である。
「睡眠」をめぐって現代人が抱える問題は、ますます深刻になりつつある。